カオス化する世界 内田樹 凱風快晴ときどき曇り 「週刊金曜日」2025年1月17日
議会は上下院とも共和党が多数派を制し、トランプは彼を訴追した司法省、FBI、CIAを無力化しようと考えている。
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イーロン・マスクとヴィヴェック・ラマスワミは「政府効率化省」を率いて、大量の職員を解雇すると宣言している。
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連邦と州のどちらが統治実務を担うべきかという論争は合衆国憲法制定時から今にいたるまで決着を見ていない。
連邦政府に大きな権限を委託すべきだと主張したハミルトンやマディソンら「フェデラリスト」はその理由を州政府に対して州民たちは無条件の信頼を寄せるからだとしている。
州は住民の共感と同質性を基盤にして成立した共同体である。
だが、共感や同質性に基づく共同体に権力を委ねてはならないとフェデラリストたちは言う。
なぜなら、連邦政府と州政府が対立した時、州民たちは無条件に州に加担し、連邦に抵抗するはずだからである。
その時、合衆国の統合は失われる。
だから、共感の共同体である州政府にではなく、共感できず信用できない連邦政府にこそ権力を委ね、つねに猜疑心を以て政府を監視する方が国は安全なのだとフェデラリストは語った。
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