奥能登だけではない「もう故郷に住めなくなる」液状化で深刻な被害 内灘町の住民は「激甚災害」指定を待つ(堀潤) – エキスパート – Yahoo!ニュース
地震発生から5日目、金沢市中心部から車で約20分、最大震度5弱を観測した内灘町を訪ねた。
県道8号線を北上、西荒屋地区に入ると、目の錯覚かと思うほど家々が歪み、道路はうねっていた。電柱は全て斜めに傾き、木材をつっかえ棒にしてかろうじて倒壊を免れているものもあった。ぶらりと垂れ下がる電線を避けるように、住民の人たちが身をかがめながら、避難所と自宅を往復する姿が見られた。
傾いた住宅の玄関付近はどこも白い砂に覆われていた。その砂の下からは突き上げられるようにして、割れたコンクリートの破片が顔を覗かせている。
住宅の中から、60代の男性が声をかけてくれた。
『このあたりが、内灘町でも酷い被害が出ている地域。液状化が起きて、内側から何もかも傾いてしまって。ここは目の前が「河北潟干拓地」で地盤が柔らかいところ。こうなってしまった以上は、もう、なんとか乗り越えるしかないというか』と語り、唇を噛んだ。https://www.youtube.com/embed/_9QlaJMkOhQ?feature=shared&rel=0&wmode=transparent
◆前回の液状化は230年前
内灘町役場によると、1799 年(寛政11年)に発生した金沢地震において内灘町での液状化の履歴が確認されているという。
町は、東日本大震災での首都圏臨海部での大規模な液状化被害を受け、2013年に「液状化マップ」を作成。県道8号線沿線を、発生確率が高い地域として色分けをしていた。震度6強から7の地震を想定したものだ。
Q&Aでは『「液状化しやすさ大」の区域に自宅が含まれています。どうすればよいのでしょうか?』という問いに対し「過去の事例から液状化発生の面積率は、液状化の高い発生区域で20%程度です」と回答。今回の地震による液状化がどの程度の範囲で発生したのかまだ全体の状況は把握できていない。
男性は外を眺めながらこう呟いた。
「お年寄りが多い地域でもあるから、もう出ていってしまうんじゃないかと。これから家を建てるわけにもいかないだろうし。なるべく早く対策を取らないと、人口流出が起きてしまう」
◆「故郷を去るか」求める支援は「激甚災害」の指定
傾いた住宅街を道路に沿って歩いていると、一階の駐車場部分が完全に砂に埋もれ、車が天井まで押し上げられている家があった。液状化による被害が特に深刻だった。
家主の73歳の男性が、集まった家族と共に、冷蔵庫やテレビなど使える家財道具を外に運び出していた。
「見ての通り液状化で、もう地盤がガチャガチャ。ここに住むのももう難しいんじゃないかと、家族と相談しています。生まれも育ちもここ。自分で建てた家だから思い入れもあって。結局20年しか住めなかったです」
そう語って、じっと家を見つめた。
「今一番必要な支援は何ですか?」と質問すると、「激甚災害の指定。国なり県なりが、住宅再建のための支援を打ち出してくれればと思います。何をするのにも原資が必要で、解体の費用もかかるだろうし。。無利子で借りられるとか、補助が出るとか、それが一番。今の年齢から働いて稼ぐのも限界がありますので」と、言葉を噛み締めるように想いを語ってくださった。
◆深刻な被害は「奥能登」だけではない
国は、6日、能登半島地震を受けて、被害の認定調査を待たずに、石川県全域に「被災者生活再建支援法」を適用できるようにした。松村防災担当大臣が記者団に語った。住宅が全壊などした世帯に最大で300万円の支援金が支給されることになる。
ただし、支給を受けるには、罹災証明書など必要で、それぞれの市や町の窓口に申請しなくてはならない。過去の災害でも罹災証明書の発行や受理から支払いまでの期間が長引くなど決して簡単なことではなかった。役所の人員のサポートも必要だ。
また、激甚災害の指定に関して岸田総理は「指定が視野に入るほど甚大な状況」と語り、速やかに対応すると強調した。早ければ来週中に指定が決まるという報道もあったが、激甚災害の指定が全ての被災地域に行われるかどうかはまだ決まっていない。
過去の災害でも、地域を指定せず災害そのものを指定する場合と、市町村単位で災害を指定する場合に分かれている。
男性の家族は6日の報道を受け連絡をくれた。
「金沢の隣町が被災している事が伝わっておらず歯痒い思いをしていました。激甚災害は能登地方だけが濃厚だとは思いますが働きかけていただけると助かります」
令和6年能登半島地震の被害の全容はまだ明らかになっていない。安否不明者は石川県内で210名にのぼっている。