このままでは飢える! 食料危機への処方箋「野田モデル」が日本を救う


単行本(ソフトカバー) 2023/10/30 鈴木 宣弘 (著)


いま、日本の食料事情がかつてないほどの危機に瀕している。

そしてこう警告する「このままでは、間違いなく近い将来、日本を飢餓が襲う」と。

著者はこうした状況に至った主な4つの理由を「クワトロショック」と呼び、度々警鐘を鳴らしてきた。

「クワトロショック」とは以下の通りだ。

(1)コロナ禍による物流の停滞
(2)中国による食料の「爆買い」
(3)異常気象による世界的な不作
(4)ウクライナ戦争の勃発


こうした地球規模ともいえる動向の変化は、ただでさえ厳しい状況下で生きる日本の農業従事者をさらなる苦境へと追こんだ。

コロナ禍による物流の停滞は、生産物の価格上昇を招き、消費者の購買、消費を著しく低下させた。

また、ロシアのウクライナ侵攻によって、現在の日本農業には欠かせない化学肥料の価格が高騰し、生産者の経済的負担を著しく悪化させた。

経済の低迷によって購買力を低下させた日本は、農業生産物の購買はもとより、肥料、飼料などの農業資材、畜産資材の購買においても、中国の爆買いをはじめとして、国際競争力を失いつつある。

そして、近年続く異常気象によって壊滅的被害を被った生産者も数多い。

こうした状況下、日本の農業従事者の数は右肩下がりに低下している。

結果、日本の食料自給率はますます低下をつづける。

「食」は生命の源だが、このままでは「食」を支える農業が成り立たなくなるのは火を見るよりも明らかだ。

こうした日本農業の危機、それによって食料自給率の低下は、「日本の飢餓に直結する」と著者は警鐘を鳴らす。

本書において、こうした状況を招く要因となった戦後の米国の対日本戦略、近年の新自由主義者主導の「今だけ、金だけ、自分だけ」政策の問題点を明快、かつ構造的に抉り出す。

そのうえで、この「食」をめぐる現代日本の状況をドラスティックに変えるシステムとして、和歌山で誕生した「野田モデル」をあげる。

「野田モデル」は、生産者の利益を最優先しながら、消費者の購買志向に合わせた生産物を流通させるシステムで、これまでとはまったく異なる「直売所」である

この「野田モデル」は多くの生産者が抱えていた構造的問題打開の突破口となり、2002年第1号店設立以来、現在では和歌山県をはじめ奈良県、大阪府などで30店舗以上を展開している。

農産物だけではなく水産物の取り扱いも開始した。

現在では、関東エリアでの展開も始動しつつある。

著者は、絶望的状況にある日本の食料事情において、その状況を救う確かな光明として位置付ける。

日本の「食」の危機と解決策を考えるうえで、最上の書といえる。

渥美俊一氏に反逆した野田忠氏のイノベーション!

日本の野菜の自給率は80%と言われているが、そのために必要な種の90%が海外からの輸入、化学肥料のほとんどが輸入という脆弱な状態だ。

さらに、農家は赤字と借金返済に苦しみ、買い叩かれ、生産資材の高騰に苦しんでいる。

そんな状況を打破するユニークな方法が生まれた。
 
それは和歌山県を中心に展開する直販所「よってって」だ。

創業者は1936年(昭和11年)生まれの87歳の野田忠氏。

会社の沿革には、第1号店の「紀州の産直広場よってっていなり店」を2002年にオープンしたとあるので、66歳のときに創業したビジネスということになる。

その方法は、生産者がまず「母店」と呼ぶ店舗を決める。

たいていの場合は生産地に一番近い店舗が選ばれる。

生産者は収穫した作物をビニール袋に入れて、表には生産者名と値段を書いたラベルを貼る。

それを自分で母店に持ち込む。

ここまでは通常の産地直売所と同じ流れだ。
 
「よってって」は多店舗展開しているので、生産者が多数の店舗に収穫した農産物を並べれるのだ。

店舗のバックヤードの集配所(最近は配送センター)にある店舗別のカートに作物を載せたパレットを詰め込むと、各店の巡回トラックが転送してくれるシステムが販売拡大を可能としている。
 
母店のほかどんな店で販売するかを決めるのは生産者自身になり、母店だけでそこそこ稼げればいい人と、他店舗に転送して稼ぎたい人など、販売戦略はそれぞれ違う。

生産者の中には、年間販売学が1億円を超える人や1000万円を超える人が何百人もでてきているという。

創業者の野田氏は、現在の日本の流通業を築き上げたチェーンストア理論をペガサスクラブで学んだ。

ダイエーのフランチャイジーの経験もある。

しかし、野田氏の頭の中にあったのは製造小売業SPA(Speciality store retailer of Private label Apparel)の方法論だ。
 
しかし、生産者そのものが各地に店舗をもつのは現実的ではない。

そこで、農家が製造から販売までを自分で責任をもてるプラットホームを用意しようと考えたのだ。

これは渥美俊一氏のペガサスクラブのチェーンストア理論とは違う、まさにイノベーターの発想だ。

「よってって」には魚の漁師も委託販売を行う。

輸入でなく、近隣の精肉も並ぶ。

醤油味噌などの加工品もすべてが地産地消のものだ。

なんと、イオンにもテナントとして出店しているという。

既存の小売業とは競合しないのだ。

アメリカ中西部の農業地帯にあるウィスコンシン大学では、大規模農家の師弟向けの講義で、次のことが教えられていたという。

「食料は武器であり、標的は日本だ。直接食べる食材だけでなく、日本の畜産の餌である穀物をアメリカが全部供給できるように仕向ければ、アメリカは日本を完全にコントロールできる。これがうまくいけば、同じことを世界中に広げるのがアメリカの食料戦略となる」

世界でもっとも肥沃とされている土は大穀物地帯であるウクライナの「チェルノーゼム」だ。

次によいのが日本の「黒ぼく土」で、その農地に占める割合が世界で一番高いのが日本なのである。

この強みとイノベーター野田氏の考えたプラットホームが結合すれば、アメリカにコントロールされることなく、日本の農業は稼げるビジネスとなり、種子の自給、肥料の自給にもつながるのである。

国としても食料安全保証が確保できる。

日本の農業を支える素晴らしいシステム

私は小さいころ田辺市長野長尾ですごした。

隣の家は遠く小学校ですら、一山向こうにあった。

学校までの道のりにある家は、梅農家かミカン農家ばかりで、その他大根ジャガイモなんかわからない菜っ葉を作っていた。

水田もたまに見たが、ほぼ見ない。

中には年収1000万円を超えると噂される農家もあった。

あの時代 郵便局に勤めながら農家をやっていた親戚の叔父さんの月給が15万円だったので、すごい金額だと思う。

でも、じいちゃん、ばあちゃん、お父ちゃん、おかあちゃん、息子、その嫁が朝から晩まで働いての一家の年収だった。

その家では、出荷できない小さい干からびたミカンをいつも食っていた。

そんな人から羨ましがられる家も、今はだれも住んでいない。

私の友人で、農家を継いだ奴は知らない。

農家で働くより会社員になったほうが、楽で、安定した収入が得られるからだ。

クワトロショックで、化学肥料、燃料費が上がった今は、農家の方はもっと苦しいだろう。

政府の政策で今年10月から実施されたインボイスも、兼業農家や零細農家を圧迫する悪法だと思う。

農業が嫌いな人ばかりではない。

勝浦の色川には農業をやりたくて日本中から来た人がたくさんいる。

私の友人も 大阪堺市から色川に来て農業をやっている。

会社であったことはないが、5年ほど前、よってってに野菜を収めていると言っていた。

彼も、夢をもって色川に来たのに、農家で食えなければ、とっくに大阪に帰っていたと思う。

自分で値段をつけて、2割の利幅で、販売する場所を提供してくれる{野田モデル}に助けられた一人かと思う。

日本の食料事情を考えるなら、まず食えるだけの収入を得られるだけの仕組みが必要だと思う。

{野田モデル}は、生産者の利益を優先させながら、購買者の満足も得られる素晴らしい流通システムだと思う。

上富田の最新店舗ができるのが、楽しみです。

タイトルとURLをコピーしました