イジメ、自殺、過労死、引きこもり、身体が溶けた孤独死・・・・・・そんな話を聞こうものなら「世界にあるわけない!」と怒り出す、あるいは笑い出すのがアラブ人。
21世紀になってもあらゆる困難を抱え続ける中東イスラーム世界で、日本人を死ぬほど苦しめ苛んでいる問題が、実は一つもないなんて本当なの?
ムスリムの信じる神や世界観は人々に何を与え、何を代わりに取り上げてきたのだろう。
一方、日本人が繁栄と自由を得て、同時に失ったものはなんだろう?
コロナが別世界を運んできたように、21世紀の私たちはもはや同じ価値観では生き続けられない。
日本は歴史上、他社会から学びとり糧とするのが得意だった。
日本社会を蝕む諸問題の解決へのヒントが、遠い中東に散りばめられている!
(書評より)魂は神からの”預かりもの”という考え方
本書を読んでいて浮かんできた言葉がある。それは「畏れ」。
自分より遥かに崇高な存在によって生かされている、いつも見られているという「畏れ」の意識が、人を祈りに導き、喜捨をさせ、弱者に手を差し伸べさせるのだろう。
世の全ての宗教に欠かせない要素、そして日本人の多くが持ち合わせていない感覚。
神の前では人は弱きものであり、仮である現世でどんなに偉ぶっていてもそこに意味はない、という意識を常に持っている、だからこそこの世において人は強くなれる(或いは恐れを知らなくなる)んだろうなと。
それが宗教の強さであり、怖さでもある。
イスラム教に帰依しているアラブ人との対比で、日本人の心の狭さを本書は批判する。
中途半端に西洋の影響を受けた個人主義と、異なるものを排除する集団主義がないまぜになった結果が現代の日本人の姿なのだろうか。
宗教心がなければイジメや自殺、老後不安はなくならないのか。
そんなことはない、と言いたい、というか言わねばならないのだろうが、では何を拠りどころにするべきなのだろうか。
「お天道様が見ている」「情けは人の為ならず」、日本でも昔からあるそうした素朴な感覚をどう取り戻していったらいいのか、考えさせられる。
ハムダ(岸田)なおこ著「アラブに自殺、イジメ、老後不安はない」
はじめに
第1章 ムスリムにならう幸福の見つけ方
第2章 イスラームの教えとは
第3章 現実を数値で捉えよう
第4章 アラブに自殺はない
第5章 アラブにイジメはない
第6章 アラブに勝ち組負け組はない
――あるのはたったひとつの勝ちだけ
第7章 アラブにセクハラはあるか?
第8章 アラブに過労死はない
第9章 アラブに引きこもりはない
第10章 アラブに孤独死はない
第11章 すべてに代償はある
参考
おわりに
・「役に立つ」は人間に対して使うべき言葉ではない(254頁)
・「イジメの対象となる部位(外見、出自、性格、癖など)について、本人が反論したら一発です。
『神はこのように私を創った』と毅然と主張する人に対し、否定できる人間などいやしません」(279頁)
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この新刊本は、WHOや世界銀行等の国際機関からの大量の研究調査に基づく調査書のようなものである。
「その他、コーラン、ハディース、アラビア語の詩歌からの多くの引用が各章で紹介されています」と、氏が説明した。
「イスラム教の考え方は、実例なしに教えだけを説明されても日本人には理解が困難です。ですから私は、UAEでの生活にまつわる話や断片を沢山書き、それと同時にイスラム教の教えや引用文も書きました」
岸田氏は、1990年に「世界青年の船」事業に参加し、その時初めて中東文化に接した。
13か国から集まった200人の青年が3カ月間にわたって船旅をし、異文化を学びつつ自国を紹介し、様々な考え方がある事を知って、社会問題や解決策を話し合った。
この事業に参加した後、岸田氏はUAEの男性と結婚し、そこで30年間暮らしてきた。
岸田氏は2008年に、UAEと日本間の文化および社会的交流を促進することを願って、日本UAE文化センターを設立した。
『アラブに自殺、イジメ、老後不安はない ムスリムにならう幸福の見つけ方』日本人が書いたイスラム教徒の生活