「アメリカは民主主義というよりも金権主義に近い」

たとえ将来世代のために共有資源を残しても見返りは期待できない。

人類がホモ・エコノミクスであれば、当然のことながら、資源を使い果たして将来世代には何も残さないという合理的な選択をするはずである。

ところが、実際には平均68%が将来世代のために自分が得られる利益をあきらめ、資源を残す選択をした。

もちろん、問題はある。

目先の利益のためにコモンズを使い果たす選択をした人が3人に1もいたことだ。

そこで、研究者はこのグループに「直接民主主義」を介して集団で意思決定をするとどうなるかを行ってみた。

3人寄れば文殊の知恵ではないが、3人のうちの2人が利己的な1人を抑え込み、結果として生態経済学者が「定常経済」と呼ぶものが実現できることがわかったのだという。

この実験は、人間の本性は善であって、いまの生態学的な危機を引き起こしているのが、欲にかられた人間の本性のためではないことを明らかにしている。

これは素晴らしいことだし未来への希望がもてる話だ。

とはいえ、逆に疑問を持つ。

未来のためにコモンズの悲劇を回避しようとしているのが人々の意志であるならば、なぜ、現実の政策決定が人々が望んでいるモノと食い違っているのかだ。

筆者であるジェイソン・ヒッケルは、「それは、今の民主主義社会が実は民主主義社会ではないことにほかならない」との一文で片付け米国を例にあげる。

米国では、企業がロビー活動を介して政治をコントロールしているため、大多数の市民が望まない政策が優先されて策定されるとする。

そして、マスメディアも6社が全メディアの90%を支配して企業に不利な情報は流れない。

「その意味で、アメリカは民主主義というよりも金権主義に近い」

つまり、ヒッケルによれば、庶民の希望が通らず、地球環境が危機に直面しているのは、政治システムが腐敗しているからなのだ。

ではどうすればいいのか。ヒッケルは、政治を変えるには運動が必要だとして、気候変動ストライキ、環境保護団体エクスティンクション・レベリオン、そして、ビア・カンペシーナをあげる。

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