“養父と7年間も面会できない” 「成年後見制度」でトラブルに 「終身制」から「任期制」へ…見直し議論も

“養父と7年間も面会できない” 「成年後見制度」でトラブルに 「終身制」から「任期制」へ…見直し議論も | IRAW by RCC

「成年後見制度」は、認知症や知的障害がある人たちを、親族のほか弁護士などの専門家が「後見人」になって財産管理などの手続きをサポートする制度です。超高齢社会に対応するために導入された制度なんですが、こんな動きがありました。

小泉龍司法務大臣
「成年後見制度に対するニーズの増加、多様化が見込まれますけども、これに的確に対応できていないのではないか。成年後見制度を見直して、より利用しやすいものとする必要がある」

小泉法務大臣は13日の記者会見でこのように述べて、「後見人の期間制」を導入するなど制度の見直しを法制審議会に諮問する考えを示しました。

「後見人の期間制」という話も出ましたが、現在の成年後見制度はそうではありません。後見人は基本的に「終身制」。つまり、いったん選任されるとサポートする人が亡くなるまで担当します。

成年後見制度を巡るトラブルは広島など全国で相次いでいます。その実情を取材しました。

広島県福山市に住む石井靖子さんです。

石井さんの養父で資産家の北川他久美さん(82)は生まれつき聴覚に障害があり、兵庫県内の特別養護老人ホームに入所しています。

石井さんは7年前、サービスの内容に満足していなかったことなどから、北川さんを別の施設に移そうとしたといいます。

養父が成年後見制度を利用 石井靖子さん
「広島県の呉市に聴覚障害者の方の施設が別にあって、で、そこが見学に行ってみたら、すごくいいんじゃないかなと思って。本当に合うかどうかで見てもらおうかっていうので、短期の外泊を施設長に言ったんですね。で、そうしたら施設長が怒りまして、『そんなこと言って出るんでしょう』『絶対出しません』って言って怒って」

石井さんは、その後、施設から事前の相談もなく、「成年後見制度に基づいて後見人をつけた」と一方的に伝えられたと話します。

養父が成年後見制度を利用 石井靖子さん
「家族に言わずに後見制度をつけられてしまいまして、それから、もう7年戦ってるんですけれども、結局は家族に会えない、そういう状況を作らされてます」

後見人の弁護士から「養父の北川さんは『会いたくない』と言っている」と告げられ、7年間も面会できない状態が続いているといいます。石井さんは、北川さんの意思を直接確認したいと、施設や後見人を相手に民事裁判を起こしています。

養父が成年後見制度を利用 石井靖子さん
「家族の中で全然完結できる内容でサポートできるところに赤の他人が入ってくる。ここがもうすごい問題だと思いますので」

成年後見制度を巡るトラブルは刑事事件にもなっています。

元弁護士 成田学被告(56)
「お話しできませんよ、今、公判中ですから」

福山市の元弁護士・成田学被告(56)は、後見人などとして男女3人から預かった2348万円余りを着服したとして、業務上横領などの罪に問われています。

着服した金はキャバクラ通いや高級ブランド品の購入などに使ったとされます。

成田被告が所属していた広島弁護士会はー

広島弁護士会 坂下宗生会長
「弁護士あるいは弁護士制度そのものに対する大変な裏切りで、信頼を大きく損ないかねない、そういう事案で、残念としか言いようがない」

事件前は広島弁護士会の福山地区会長を務めるなど活躍していた成田被告。代理人の弁護士によると、ピーク時の収入は過払い金返還請求の対応などで年間およそ7000万円ありましたが、事件当時は4000万円に減っていました。

預り金をキャバクラなどに使い込んだことについて裁判で成田被告は「仕事がうまくいかず、酒に逃げていた。金銭感覚がまひしていた」と証言しています。

広島弁護士会 坂下宗生会長
「どこかで初めて一線を超える瞬間があったと思うんですけれども、そこでどうして引き返せなかったのかというのが、非常に悔しく思われます」

弁護士が後見人となるケースでは、弁護士会から特定の弁護士が推薦され、家庭裁判所が選任するのが一般的です。選任した後は後見人からの定期的な報告書でチェックし、トラブルがあれば解任することもできます。

広島家庭裁判所 相澤千尋裁判官
「成年後見人に不正な行為、いわゆる財産の横領ですとか、体調不良で事務ができないとかですね、そういった事情がある場合には、ご本人ですとか、それからご親族の申し立てによって、あるいは裁判所の方でも、職権で成年後見人を解任するということができます」

ただ後見人は終身制のため、解任に当たるようなトラブルの認定にはハードルがあり、解任の手続きにも一定の期間が必要となります。

養父が成年後見制度を利用 石井靖子さん
「弁護士でも、例えばギャンブル好きな人もいるだろうし、お金使うの荒い人がいるかもしれないですし、それをそこに他人のお金預かってねって言って、職業のバッジだけで預けるっていうのは、その家族からしたらすごく不安なことです」

石井さんは3年前、成年後見制度の利用者の家族などでつくる全国組織「後見制度と家族の会」を立ち上げました。会員どうしで悩みを共有するとともに、▽原則として親族が後見人になること、▽相談窓口の設置など、制度の見直しを訴えています。

養父が成年後見制度を利用 石井靖子さん
「後見制度が必要になったときは家族が後見人になって、その人に1番近い人間ですので、支えてあげて、いろんなことをしてあげる。例えば財産管理が必要なんだったら、税理士、弁護士と契約して財産管理制度っていうものを利用すればいいし」

一方、家庭裁判所や弁護士会は、「親族だけでなく専門家も後見人となる現在の制度が必要だ」と指摘します。

広島家庭裁判所 相澤千尋裁判官
「申し立ての段階から特にご親族の候補者がいらっしゃらないという事案も多数ございまして、いかにそのご本人が必要とされている支援をできるかというところが1番大事なところだと思うんですね」

広島弁護士会 坂下宗生会長
「家族が抱いている不満、これは貢献制度の課題につながるものかもしれませんので、そういう枠組みの中で検討し、解消されるべき問題ではないかなというふうに思っています」

成年後見制度について小泉法務大臣は13日の会見で▽後見人には「包括的な代理権」があって本人の自己決定が必要以上に制限される、▽ニーズや状況の変化に応じて後見人を交代させたり制度の利用をやめたりすることができない、といった課題に触れています。

認知症の患者は600万人を超えていますが、成年後見制度の利用者は2022年末の時点で、およそ25万人にとどまっています。

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