「亡くなる人が増えるのだから、葬儀業界・お寺は儲かるでしょう」と言われることがある。
しかし、それは誤解だ。
スタグフレーション(景気が後退していく中でインフレーション<物価上昇>が同時進行する現象)が続くこのご時世、葬儀や墓に、そもそも、そんなにたくさんのお金を掛けれる人は少ない。
そして、家族・地域・会社という日本社会が従来育んできた「縁」が希薄化することによって、葬儀の参列者が数名というのは、日々、葬儀の現場に出ている者の感覚として、もはや普通のこととなっている。
どの葬儀社さんも同じだろうが、コロナ禍という状況もあって、多くの方を招いて葬儀をやるというよりは、基本的に家族中心のお別れ会=「家族葬」という形のお別れのスタイルが、徐々に一般的になりつつあるのではなかろうか?(特に首都圏の都市部では)
その事例を示す記事が、以下。。
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「不景気でも葬儀社は安泰」の嘘 単価減少、大手参入で競争激化する葬儀業界のリアル(マネーポストWEB) – Yahoo!ニュース
65歳以上の高齢者が人口の約3割を占める超高齢社会となった日本を今後待ち受けるのは、多死社会だ。厚生労働省の「令和2年版 厚生労働白書」によると、死亡数は年々増え続け、2040年には1989年(約79万人)の2倍を超える水準(約168万人)まで増えると見込まれている。
死亡数が増加傾向にあるのだから、葬儀社のニーズも増えて葬儀市場の拡大も見込まれそうだが、実際はそうではないようだ。
経済産業省の「特定サービス産業動態統計調査」によると、葬儀業の売上高は2017年の6112億円をピークに減少傾向にあり、2021年は5157億円に。競争環境が厳しさを増す中で、淘汰される葬儀社も出始めているという。一体何が起きているのか。
自営業の60代男性・Aさんは、両親の葬儀を行った際、ほぼ同じ葬儀内容だったにもかかわらず、料金が違ったことを不思議に思った。
「どちらも家族葬でしたが、父親は120万円ほどでした。初期プランは地元のどの葬儀社より安かったのに、そこに会場使用料などのオプションがいろいろついて、結果的に他より高くなりました。でも、対応は遺族に真摯に向き合ってくれて、満足できるものでした。
数年後に母親が亡くなった時には、違う葬儀社に頼んでみました。複数社に見積もりを取ってから、父親の時より費用を抑えたい旨を伝えると、同じ内容で100万円で済んだのです。かといって、母親の時よりも簡素とか、何かを意識的に省いたつもりはなかったのですが……」(Aさん)
“寺とのつながり”のメリットが減ってきた
葬儀社に長年勤務する現役社員で「考える葬儀屋さんのブログ」管理人の赤城啓昭氏は、こう指摘する。
「家族経営の零細企業や中小企業の中には淘汰されるところも出てきていますね。一方、大手は支店を作るなど、どんどん大きくなっています。やはり大手だと効率的に運営できるので、生産性が高いという強みはあるでしょう。
『人は必ず亡くなるから、葬儀社は安泰』というわけではありません。時代とともに葬儀が簡略化され、小規模になっているので、単価は安くなる一方です。アピールポイントがない葬儀社は、価格競争に巻き込まれ、淘汰されることになります。その流れから、家族経営の葬儀社などは、『儲からない』と子供が継がず、廃業というケースも少なくありません」(赤城氏、以下「」内同)
大手とは異なり、その土地ならではのネットワークがあり、ローカルルールにも精通する地元の葬儀屋ならではの強みもあるようにも思えるが、今の実態はどうなのか。
「確かに地方の葬儀社は、かつて“寺との強いつながり”という強みがありました。『檀家さんが亡くなったら紹介してくださいね』という感じです。とはいえ、檀家の減少で寺の力が弱くなってくると、そのうまみがなくなってきました。そこに大手がチャンスとばかりに参入。大手は名が知られているブランド力と安心感があり、サービス水準が一定以上で、クオリティも高い。一度受け入れられれば、その土地に定着することも容易です」
また競争が激化する過程において、地方の葬儀社には“ブラック化”しているところも少なくないという。
「安い賃金で人が集まらず、時給換算ならファストフード店のバイトをやっていた方がいい、なんていうところもあります。さらに、若手を育てようという気概も乏しい。ベテランが辞めたら、新人を入社1か月で現場に出し、つぶれるまで“使い捨てる”ことも珍しくないようです。
女性をなかなか活用できないというのも特徴です。式場を持っていない葬儀社は、祭壇を運ぶなどといった肉体労働もともなうため、女性を正社員にしたがらない傾向があるんです。ただ、会館を作ればそういった体力的なハンデは解決できるのも事実。大手では会館を設けていますし、エンバーミングでは女性の方が活躍しています」
よい葬儀社をどう見分けるか
もちろん、地元で信頼される葬儀社もある。では、個人が葬儀社を見極めるためには、どんなところをチェックすればいいのか。赤城氏は「ダメな業者は減ってきた」と前置きしたうえで、葬儀社の見分ける際の3つのポイントを教えてくれた。
「(1)まず女性社員が活躍しているか。特に若手の女性が定着していれば、企業の待遇や教育面が整っている可能性が高く、結果的に質の高いサービスが期待できます。
(2)安置室の確認。遺体を自宅に置けない人のために、葬儀社内に安置する施設があります。そこに個室があるかどうかをチェック。ダメな業者はカプセルホテル型で、遺体を“モノ”扱いしています。良い葬儀社にはきちんと個室があります。
(3)変に価格を下げるところには、気をつけましょう。低価格しかアピールすることがなく、従業員の対応が雑という可能性も否めません。当たり前ですが、故人や遺族のことを思っているかという姿勢が大切です」
生き残りをかけて競争が激化している葬儀業界。葬儀を執り行う際には、価格の安さに惑わされず、自分に合った葬儀社をしっかりと見極めたい。(了)