1定点あたり28.74人… 沖縄でコロナ感染拡大 医師「打つ手がない」 観光シーズン控え新たな懸念も(沖縄タイムス) – goo ニュース
沖縄県で新型コロナウイルス感染拡大に歯止めがかからない。
1定点あたりの感染報告は6月12日〜18日の1週間に28.74人となり、25人を超えた。
県内の医療機関では入院患者や職員への感染が同時多発、対応に追われた病院側では、救急や一般診療に制限をかけざるを得ない事態が頻発。
救急搬送に時間を要する搬送困難事例も増えている。
感染拡大の収束が見通せない中、医療関係者からは「打つ手がない」「行動制限のない地域社会との意識のギャップがつらい」との声も。
新型コロナの「5類感染症」への移行から約1か月半。
今、沖縄の医療機関で何が起きているのかー。(デジタル編集部・篠原知恵)
このままだと、6月末にかけて、各病院が医療を提供できない状態に陥るのではないか。県立中部病院感染症内科の横山周平医師はそう危惧する。
■「誰が感染しているのか分からない」
院内は、患者や職員に新型コロナ感染が同時多発。骨折や出産など、発熱以外を理由に救急外来経由で入院した患者が、入院後に新型コロナに罹(かか)っていたことが分かる事態も頻発している。
横山医師は「あまりに地域流行がひどいために、誰が感染しているのか分からない。救急外来の待合室で感染したのではないかと思うほどだ」と話す。
入院患者が新型コロナに罹ると、同室患者など複数人が「濃厚接触」となり、治療を終えていても退院時期が延びる。
入院病床は空かず、患者を受け入れることがますます難しくなるー。各病棟では悪循環の状態が続いている。
県によると、20日時点で、県内で7医療機関が救急を、3医療機関が一般診療を制限している。
中部地区に救急医療機関は県立中部病院を含め3カ所あるが、各医療機関で受け入れを一時停止する事態が相次いでいる。
新型コロナ患者が院内外で多発していることに加えて、体調不良を訴える人の救急外来の受診急増などが理由。
横山医師は「元々、沖縄は医療のキャパシティがぎりぎり。既に質の高い安全な医療は提供できなくなっている」と訴える。
■インフルエンザと「けた違い」
「これまでと違い、先を見通せない恐怖がある」。浦添総合病院の原國政直・感染対策室室長も危機感を隠さない。
県内医療機関の定点当たり感染報告は「28.74人」で、インフルエンザに置き換えると「流行注意報以上、警報間近」の状況。
だが「肌感覚で言えば、新型コロナはインフルエンザに比べて広がるスピードがけた違い」と指摘する。
他の病院同様、自身や家族の感染で欠勤する医療従事者が増加。
PCR検査や抗原検査を徹底して入り口を固めても、入院患者や職員に次々と陽性者が出るなど、感染が同時多発している。
「5類」移行前は、感染が広がると、行動制限などの政策による「ブレーキ」が掛かり、その間に対策強化に回れた。
だが今、それはなく「感染のスピードに追いつけない。終始、後手後手の対応に回っている感覚」という。
救急治療を終えた患者の転院先も見つかりづらい状況も続く。
数カ所の病院に打診しても「検討する」「折り返す」の繰り返しで数時間を要することも増えた。
その間にベッドが空かず、救急の受け入れを一時停止せざるを得ないこともある。
■沖縄観光のハイシーズンへ
「5類」移行で県内の入院調整を担った県の対策本部は5月に解散。
行政の手厚い補助もなくなり、各病院がそれぞれで「踏ん張っている」状況だが、それでも「限界に近い。ピークが見通せない中、現場の疲労はかなりたまっている」という。
沖縄は2018年、1人の観光客から101人の県民が「はしか」に感染した大流行を経験した。
極めて感染力の強いはしかは今、再び、国内で散発的に報告されている。
県内のはしかワクチン接種率(第2期、2021年度)は全国最下位で、90%を切る。
「これから沖縄観光のハイシーズンに入り、人流がさらに増える。コロナだけでなく、はしかも流行したら…。考えたくない事態だ」と話す。
原國室長は「新型コロナは単なる風邪だと受け止める人もいるだろうが、重症化する患者は一定数おり、感染によってもともとの疾患を悪化させることもある。感染拡大によって引き起こされる医療の逼迫で、救急の受け入れが止まれば、救える命が救えなくなる」と警鐘を鳴らしている。