新たな働き方、労働者協同組合で広がり 地域課題を解決 – 日本経済新聞 (nikkei.com)
私ども労働者協同組合「結の会(ワーカーズ葬祭&後見サポートセンター)」が、日経新聞にて取り上げられました。
身近な課題・地域で解決~働く人が出資の新組織=労協、福祉や子育て、役割期待~
様々な働き手が出資し、地域に必要な事業を協力して運営する「労働者協同組合(労協)」が広がってきた。2022年10月の法施行により新たに認められた非営利組織で、メンバーの事情に応じて柔軟に働ける点が特徴だ。各地に30を超える団体が誕生し、福祉や子育てなどの新たな担い手として期待されている。
三重県四日市市の労協「CampingSpecialist」は、県内の荒廃山林を切り開いたキャンプ場を運営する。SNS(交流サイト)を通じて利用が増え、年6,000人以上が県内外から訪れる。地域の名所として賑わいを見せている。
青年会議所などで出会った有志五人が五万円ずつ出資し、22年に設立。周囲の道は倒木や生活品の不法投棄が目立っていた。メンバーの樋口龍馬さん(46)は、「伐採や不用品の回収は根気がいる。苦労を分かち合える人と進めたい」と労協を選んだという。
労協では話し合って働き方を決め、賃金には最低賃金法が適用される。事業で利益が出た場合は、働いた程度で配当を決める。少子化で働き手が不足する中、主婦やシニア層を含め、幅広い人が事業に加わりやすい仕組みとされる。
4月26日までに38の労協が全国に生まれた。
福祉事業に取り組む労協も多い。ワーカーズコープ・センター事業団(東京都豊島区)は、東京都江戸川区で引きこもりの子どもや、生活困窮者らの居場所「江戸川スペースnappa」を運営している。
空き家を使い、低額で食事を提供する子ども食堂などを運営する。組合の法人格を持つと信用を得やすい。行政と連携し、日本財団から月約60万円の助成も受ける。
組合員は20~70代の4人。その一人、加藤留美子さん(72)は、「上下関係のない人間関係が魅力。この年齢になっても経営に関わり、仕事が増えても受け身ではなく、社会の役に立てればと感じられる」と、手応えを語る。
都内の「結の会」は、僧侶を中心とした労協だ。障がい者や認知症の人の成年後見の支援や、死後の遺品整理などを手掛ける。発起人の中下大樹さん(48)は、「家族や地域、会社だけではない第四の縁を作りたい」と、設立の理由を語る。
労協が事業を続けていく為には、安定した収入を得て、メンバーに賃金を支払っていく必要がある。運営を軌道に乗せるための経営ノウハウの蓄積がカギとなる。
労協に詳しい日本総合研究所の小島明子スペシャリストは、「普及の余地は大きく、シニアの新たな働き方になりうる」とみる一方、「経営支援に詳しい金融機関などとの連携も必要だ」と話す。
多様な働き方へ一歩~昨年施行・新法で可能に~
労働者協同組合は働く人が出資し、経営と労働の双方を担う。2022年10月の労働者協同組合法の施行により、設立が可能となった。これまでワーカーズコープなどの名称で、同様の働き方はあったが、根拠法がなく、任意団体などで活動してきた。
3人以上の発起人が法務局で登記すれば設立できる。介護や福祉、子育て、若者・困窮者支援と言った事業分野が想定され、事業に必要な額を組合員が出資する。
都道府県が、立ち入り検査や解散命令といった指導監督の権限を持つ。
地域課題の解決に向けた団体としては、NPO法人や企業組合などもある。NPO法人は出資を受けられず、企業組合は営利目的のため利益の出しにくい事業に乗り出しづらいといった事情があった。
厚生労働省担当者は、「労働者協同組合は、多様な働き方の実現への一歩になる」と強調する。