2月27日、3月20日と、労働者協同組合「結の会(ワーカーズ葬祭&後見サポートセンター)」では、成年後見制度について連続講座として勉強会を行いました。
詳細は→https://yuinokai-roukyou.com/108/
講師は「後見制度と家族の会」代表の石井靖子さん。後見制度と家族の会 (kokenkaizen.com)
ご家族に後見人が付いた当事者としての発言を聞かせて頂きました。
(写真・右上。PCを前に話されている女性が石井さん)
石井さんの講演を聞いて下さった方から、講演の感想が届きました。
了承を得た上で、以下、掲載させていただきます。
「後見制度は必要ですか?」について
3月20日夜の石井靖子さんのお話を伺った上での感想と私見です。
2月27日のお話では、後見制度は性善説に立って作られた制度である、しかしビジネスとして後見人になる弁護士や司法書士の中には、民法858条(成年被後見人の意思の尊重および身上の配慮)の趣旨を守らないケースがある。
そのため人権侵害-それも深刻な-と呼ぶべき問題が発生している。
これに対し、実際に被害を受けた石井さんが立ち上げた「家族の会」は現実に起きている問題を明らかにし、また困っている家族の相談や問題解決に向けて日々取り組んでいる、そのようなお話であった。
そして3月20日の話。
まず、後見制度が国連から、「国連障がい者権利条約」違反であると指摘されたとのことです。
本人の意思決定を阻害している、つまり人権侵害があるということでしょう。
この話を伺った時、残念ながら日本という国の後進性を再認識しました。
これは性的マイノリティに対する一部保守系議員の蔑視発言、また入管を巡る難民申請が困難を極めることや入管施設での傷害事件、長年続いてきたハンセン病患者への差別的な扱いなどと底流で共通する問題のように感じます。
夫婦別姓すら法的に実現できていない国であり、暗い気持ちを感じざるをおえません。
こうした問題の解決には、日本人の意識が変わらねばならないという難題がある。
2011年3月の大震災を受け原子力発電を停止していくことを決めた政府が電力不足を理由に2022年末再稼働に舵を切った。それを電気代値上げが困ることで過半数の国民が支持してしまう。
この構図に、国民性は本当に変わらないなと失望しました。意識が変わることの難しさを覚えます。
次に認知症とその介護について。
2020年における高齢者の認知症有病率は約17%。つまり6人に1人が認知症と言われています。
7月の早大オープンカレッジの講座で頂いた資料によると90代では60%の人が認知症になっていることがわかります。
2025年、団塊世代全員が後期高齢者に突入するため、この問題は更に深刻の度を増すでしょう。
今まで勤めてきた職場でも、介護休暇・休職を取っている方たちはいました。
しかし介護休暇・休職制度は給与の減額率が高く、その方たちは収入減を強いられていた。
また介護疲れから自殺に追い込まれた友人もいます。
私の身近でもそのような事例があったのだから、全国的にみれば、介護離職や老老介護、介護を苦にした自殺や心中は深刻になっていると言えるでしょう。
介護離職は40代、50代の現役世代の将来設計に甚大な影響を及ぼしますが、今は個人が犠牲になるだけで済まされているような気がしてなりません。
このように認知症の問題が深刻化する中、後見制度が家族の負担を軽減しうるのか?
現在の利用者は約17万人だという。
認知症高齢者が600万人超に対し利用者は極めて少ない。これは何故か?
石井さんのお話を伺う中で、後見制度が家族の負担を軽減しない、そればかりか余計なストレスに晒されるという実態が見えてきました。だから利用者は少ないのでしょう。
この問題点はなんなのか?
話の中で、後見制度実現に向けて司法書士会が政治家へ働きかけたと知りました。
介護に悩む家族を何とかしたいということよりも、高齢世代が持つ金融資産や不動産について、自分たちのビジネスチャンスがあるという目論見が優先された、ということのようでした。
民法859条で後見人の職務を被後見人の財産管理、財産に関する法律行為に限定している。
それ以外の身上監護(介護)は親族になるため、今まで親族が担っていた財産管理と身上監護から財産管理を切り離す。
それを自分たちの職務とし、そこから報酬(手数料)を受け取る。このような仕組みが見えてきます。
これでは家族の負担軽減にはつながらない。むしろお金だけ取られてしまう。
一方、ビジネス後見人が対象としない資産の乏しい高齢世帯や高齢単身世帯。
老人福祉法で対象となるケース。
こちらは、社会福祉協議会の「日常生活自立支援事業」の対象となるとのことでした。
しかし、この対象者が十分捕捉されておらず、孤独死につながっていたり、或いは生保ビジネスの対象にされているという実態も当日の私の質問に対する回答で知りました。
市民後見人の育成をしている自治体もあるようですが、その人数は認知症高齢者の数に比し極めて少ない現状にあるようです。
「家族の会」で発信される情報は、現に後見制度を使っている方たちの生の声です。
そこから読めることは、この制度を使わない方がよい。使わないで解決する方法を探した方がいい、ということでしょう。
質疑応答の中で「家族信託制度」へ言及されている方がいました。
確かにこの制度を使えば近い将来認知症になっても財産の管理・処分が可能であり一考すべきものはある。
ただこの制度の推進を誰がしているのか、その辺の見極めは必要となってくるでしょう。
また「信託制度」でもう一つ問題点をあげると、7月に早大オープンカレッジの講座で日本相続対策研究所の方(本間さん)が話されていた、相続で兄弟姉妹間でも不信や仲違いが発生するということです。
「信託制度」を使う場合、受託者がすんなり決まるのか?それがもとでトラブルは起きないだろうか?その点は気になりました。
「家族がいたら家族の中で解決する方向が一番いいのでは」と石井さんは話されていました。
確かにそれが一番だと思います。
ただそれには、家族の誰かが法律や制度をよく調べ当事者意識をもってことにあたること、正しい情報を入手することなどの条件が必須かと思いました。
今の時代は、多くの方がネットから知識を得ようとします。
その情報の中には営業目的のものが多々あり、情報の取捨選択が適切にできるかが肝心です。
その点、「家族の会」の情報発信は、当事者が行っており信頼できる。
この会の存在を今回の学習会において知りえたことは、有難かったと思います。