地域リハビリテーションを持続可能にするには?

筆者は以前、緩和ケア病棟にて、末期癌患者の看取りに従事していた。

勤務先の病院は精神科が母体であり、精神科から緩和ケア病棟へ患者が「送られて」来ることも多く、家族や地域とも縁が切れ、所謂「身寄りのない患者」も多かった。

患者が亡くなってしまっても、遺体の引き取りすら拒否をする遺族も多く、対応には苦労した経験が筆者にはある。

このブログでは、それらの経験も踏まえ「地域リハビリテーションを持続可能にする」には、どのような要素が必要であるのか?また、福祉の専門家として出来ることを考察してみたい。


福祉の専門家(社会福祉士・精神保健福祉士)として出来ること

2004年9月、厚生労働省は「入院医療中心から地域生活中心へ」という精神保健医療福祉の改革ビジョンを掲げ、①早期退院の実現を含む精神医療の改革、②精神障害、精神疾患に対する国民の理解の深化、③地域生活支援の強化の枠組みを提示し、2017年2月には「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会報告書」において、精神障害者にも対応した地域包括ケアシステム(医療・障害福祉・介護・住まい・社会参加等が包括的に地域で確保されるシステム)を新たな基軸とすると表明した。

つまり地域を軸とした精神科リハビリテーションの確立に向けて、国は舵を切ったのである。

その実現の為には、①居場所として住む場所の確保②生活支援の拡充(共同生活援助・グループホームや地域移行支援)③働く機会の保障④所得の保障(生活保護や障害年金の受給を周知徹底)⑤精神科訪問看護・多職種チームによるアウトリーチの拡充が特に必要である。

また、本人が地域で暮らすという意欲を再び喚起する為、実効的な退院支援活動も併せて必要である。

とりわけ、同じ体験を持つピアサポーターの存在は極めて大きい。

当事者体験を有するピアサポーター自身が、傷つき、自信を失った人たちに対して、自らの経験を語り、地域で暮らす姿を見せる事は、当事者の退院意欲を引き出す力に繋がる。

そして、それらの円滑な連携を図る為、社会福祉士・精神保健福祉士が両者の媒介役となり、当事者をエンパワーメントしていく事が求められる。

また、令和三年度の障害者白書によれば、精神障害のある人は約419万人とされている。

地域医療と地域福祉の資源を充実させれば、たとえ病状を悪化させても、入院に至らず、地域の中で対応できる。

それは医療費の削減にも繋がる。

入院以外の選択肢を増やし、可能な限り地域生活を継続出来る様な仕組みと資源の充実を実現するよう、社会福祉士・精神保健福祉士はソーシャルアクションによって国や国民に訴えていく事も必要であろう。

一方、近年においては、対話を重視することにより入院を回避することは可能であるとの考えのもと、諸外国においては、ACT(包括型地域生活支援サービス)、オープンダイアローグ(急性期を含めた精神疾患の患者に対し、危機に即座に専門職や家族、友人等の関係者が集まって、本人と共に開かれた対話を繰り返して治療する試み)等の実践により、入院を回避するための取組みが各地で行われ、日本においては、精神科医の森川すいめい氏らによって実践されている。

社会福祉士・精神保健福祉士は、それらの活動を社会に広めていく役割も求められよう。


労働者協同組合「結の会(ワーカーズ葬祭&後見サポートセンター)」の取り組み→生前からお互いに助け合う会=互助会の創立

地域を軸とした精神科リハビリテーションを持続可能にする為には、ソフト・ハードの両面が必要である。

労働者協同組合「結の会(ワーカーズ葬祭&後見サポートセンター)」では、筆者の病院での看取りの経験、またお寺の僧侶、葬儀社勤務経験を活かし、看取りから葬儀・納骨までをワンストップサービスで行う「互助会」事業を行っている。

非営利で自助グループ的な「互助会」を、当事者を中心に生前から組織することを通じ、看取りから葬儀・納骨までも仲間内で対応したい。

その試みは結果として、地域リハビリテーションを持続可能にする事に繋がるのではなかろうか。

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