「接種によりアナフィラキシーショックで亡くなった人は極めてまれ」

「接種によりアナフィラキシーショックで亡くなった人は極めてまれ」

ワクチン巡り 広がる誤情報 「科学に基づき正しく理解を」 免疫学の第一人者 上田出身・宮坂昌之さんに聞く

Q 新型コロナ下でウイルスや免疫に関する誤った情報が広がったのはなぜか。

A 免疫学はここ20年の間に急速に進歩し、新たに分かってきたことが非常に多い。

ノーベル賞を受賞する画期的な発見がいくつもあり、教科書は何度も書き換えられた。

医師や免疫学者、感染症学者でも最新の知識を理解していない人が意外と多く、昔の知識のまま今では間違いとなった情報を新聞やテレビで語っていた「専門家」もいた。

SNSではワクチンへの不安や疑問につけ込み、注目を集めることを商売にしている人がいる。

専門家でも自分の願望や思い込みに合致する文献や論文しか読もうとせず、合致しない情報は「でっち上げだ」とする傾向がある。

Q 一部で「コロナワクチンの接種が始まってから(死者が例年の水準をどれだけ上回ったかを示す)超過死亡が増えた」と言われている。

A 接種によりアナフィラキシーショックで亡くなった人は極めてまれ。

接種で突然死が急増していることはなく、接種後の死亡症例の多くが接種とは無関係の突然死の可能性が高い。

日本では新型コロナワクチン接種が始まる前、年間12万人が突然死していた。

2021年2月から12月にワクチンを接種した総人口の75・4%では(接種していない)通常でも約7万3千人が突然死すると予測される。

だが、接種後に亡くなったと報告されたのは1402例と余りに乖離が大きい。

超過死亡の増加は感染拡大と密接に連動しており、圧倒的に多いのはコロナに感染し、持病を悪化させて亡くなる人だ。

Q (24年)10月に始まった新型コロナワクチン定期接種では、従来のメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンに限らず、新たに「レプリコンワクチン」が加わった。一部で「体内で(遺伝物質の)mRNAが無限に増え、ワクチンを接種していない人にうつす」との情報が飛び交っている。

A 従来のmRNAワクチンはmRNAが体内の分解酵素で壊され、ウイルスへの免疫が半年くらいで大きく減ってしまう問題があった。

効果を持続させようとする試みの一つがレプリコンワクチンだ。

体内でmRNAを一定期間自己増殖させるため、従来ワクチンより接種量が少量で済み、免疫の持続期間が長くなる可能性がある。

mRNAが感染性を持つには感染性粒子がつくられることが必要だが、レプリコンワクチンからはつくられず他人に感染することはない、、、

【免疫やワクチンに関する疑問 新著で解説】

(大阪大学免疫学フロンティア研究センターの招へい教授)宮坂昌之さんの新著「あなたの健康は免疫でできている」は、最新の知見を踏まえ、免疫やワクチンに関する50の疑問についてQ&A形式で解説している。

新型コロナワクチンを巡り、「メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン接種で死者が増えたのか」「ワクチンを何度もうつと免疫が落ちるのか」「コロナ禍でわれわれの免疫は低下したのか」といった問いに図解付きで分かりやすく回答。

レプリコンワクチンについても触れたほか、「どうして最近アレルギーは増えているのか」「アルツハイマー病は免疫低下によって起きるのか」といった免疫と老化、がんとの関係についても説明している。

集英社インターナショナル(東京)刊。新書判、272ページ、1045円(税込み)。

(信濃毎日新聞 24年12月26日)

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