厚生労働省からは健康保険証の廃止について以下の説明を受けている。省令改正できなければ、保険証の交付は続けざるを得ない。
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(質問)
番号法関連法で6月2日成立した健康保険法改正では、資格確認書の新設は規定されているが、健康保険証の交付義務は省令事項のため法律上は規定されていない。
(1) 法改正で健康保険証の廃止が決定したとの説明がされているが、その法的根拠を明らかにされた。
(回答要旨)
国民健康保険法や高齢者の医療の確保に関する法律には、被保険者証の交付自体が定められており、2023年6月2日成立の番号法関連の法改正の中て、その規定を法律から削除している。
健康保険法では、被保険者証の交付を法律ではなく省令(施行規則)で規定しているので、健康保険法に基づく健康保険証に限れば、まだ法律上の措置はなされていない。
仮に省令改正をしなかった場合には、国保や高齢者は施行日を定めて廃止されるが、健康保険法だけ交付が残りつづけることになる。
●忌避されるマイナ保険証
マイナポイントで利益誘導した結果、マイナンバーカードの保有数は9200万枚余、人口比の保有率は約73.7%になった(2024年4月30日時点総務省サイト)。
しかし2023年3月までにほぼ全ての住民に保有させるという政府方針は、達成できなかった。
そのうちマイナ保険証の利用登録をしているのは7254.8万人、マイナカード保有者の78.5%となっている(2024年4月30日時点デジタル庁ダッシュボード)。
ところが医療機関窓口でマイナ保険証を利用したのは、わずか6.56%しかいない。
93%以上は健康保険証を提示している(2024年4月、下記厚労省資料参照)。
マイナ保険証登録をしている大部分の人は、利用せずに健康保険証を提示しているのが現実だ。
政府は健康保険証が使われないのは医療機関が利用を勧めないためだと曲解し、今年に入ってから医療機関に対してマイナ保険証の利用率による支援金や診療報酬加算、窓口でのマイナ保険証利用の勧誘マニュアルや勧誘状況の調査など利用促進策を次々と示している。
河野デジタル大臣は保険証の提示を求める医療機関を「密告」するよう、自民党国会議員に文書を送って物議をかもした。
このような強圧的な「利用促進」により利用率は今年になり増えたが、しかし毎月1%程度の微増にとどまっている。
マイナ保険証が利用されないのは、健康保険証より不便で、依然として保険資格の誤表示など誤りが続き、健康情報の自己情報コントロールが保障されず個人情報の扱いに不安を抱いているからだ。
この現実を直視し、制度設計を見直さないかぎり、患者はマイナ保険証を利用したいとは思わない。
●法令違反の厚労省ポスターは撤去を
政府は利用促進策の一つとして、医療機関で右記のチラシを配布・掲示するよう求めている。
しかし保険者(健保組合、協会けんぽ)に健康保険証の交付を義務付けている省令は、まだ改正されていない(現在パブコメ中)。
まだ決まっていないにもかかわらず「本年12月2日から現行の健康保険証は発行されなくなります」という記載は誤りだ。
厚労省はこのチラシの掲示・配布を中止し、謝罪・回収すべきだ。