〈恐れるな〉
恐怖が創り出す思考停止はビジネスになるので、スマホの中は、恐れや不安を刺激するものでいっぱいです。
SNSで、最もスピーディに拡散されるのも、怒りと恐怖。
スマホが市場に出て以降の売り上げと、十代の子供たちの自殺率の推移がほぼ重なることは、決して偶然ではありません。
何よりもまずいのは、過去を後悔し、未来を心配ばかりしていると、意識が今ここに集中できず、心と体と魂がバラバラになってしまい、為政者にとって、一番洗脳しやすい状態になってしまうことです。
恐れにつかまらない最良の方法は、中途半端に抵抗せず、その場で思い切り怖がってしまうこと。
感情は感じきることで消えますから、そちらにとられていた注意が再び戻ってきて、直感の冴えた自分軸に戻れるからです。
スマホに頭を持っていかれないように、生活の中で自分の動きに注意を向けるというのも、おすすめです。
朝起きて、歯を磨いて、服を着替えて、ご飯を食べる前に、胸の前でそっと手を合わせる、、、
一つひとつの仕草を、意識して意図的にやることで、天とつながれると教えてくれたのは、京都に住む茶人の、半澤鶴子先生でした。
日本に帰国してから気づいたのは、これを徹底した「道」の存在です。
茶道に華道に合気道、どれもきちんと型があり、その一つひとつに注意をこめる姿があんなにも美しく胸を打つのは、そうすることで瞬間を100%生きているからなのでしょう。
〈違和感〉を覚えたら、まだ大丈夫、と安心して下さい。
感じる力が働いていることは、思考停止した受け身の消費者でなく、血の通った身体と健やかな心がある、人間である証拠です。
〈民は愚かで弱い〉というのは、私たちがそれを受け入れ、自信を失い、無力になることで、得をする誰かからの刷り込みにすぎません。
この章に出てくる、日常の中でふと抱く違和感を行動に変えることで、本来の力を取り戻し社会を変え始めた、ごく普通の人々のように、私たちが、今この瞬間に意識を向け、自分の頭で考え、次の現実を決める力を手放さないかぎり、未来はいくらでも創り出してゆけるのです。
堤未果「国民の違和感は9割正しい」 215p PHP新書 2024年4月8日刊行