Shoshana Zuboff “The Age of Surveillance Capitalism”
(書評より)気づかれずに奪われていく自己決定、自律性、個人、そして自由意志
本書の著者であるズボフも登場するNetflixの「監視資本主義」というドキュメンタリーを見たのだが、過剰に消費を促されたり、スマホ依存に陥ったり、極端な政治意見に誘導されたり…という論点で、本書もそんな感じかと思ったら違った。
もっと歴史的な視点で本書は描き出されている。
20世紀の資本主義を支えたのは、フォードに代表される産業資本主義だ。
しかし産業資本主義は自然を破壊し、現在ようやく深刻に日本でも報道されるようになったが、気候変動までもたらしてしまった(もちろんこの破壊はまだまだ進行中だが)。
一方、21世紀の資本主義は監視資本主義にとって変わられる。
そこで破壊されるのは、人間そのものであるという。
監視資本主義によって人間は、行動データの抽出のための「天然資源」に成り下り、しまいには行動の修正までされる。
しかも、その「抽出」や「修正」は気づかれてしまうと、監視資本主義の妨げになってしまうので、気づかれずに行われる。
また「政治」は集団的なデータにとって効率を妨げる。
監視資本主義は介入の余地を与えない。
そして、人間の行動が操作される中で、自己決定や自律性、個人、自由意志までもが意味を失ってしまうのだ。
これは民主主義の根幹を決定的に掘り崩すことである。
この指摘こそが本書の白眉だ。
最近、「デジタル封建制」という表現もあるらしいが、まさに一部の封建領主だけが民主主義なしに、人々を飼い慣らすという新たな資本主義社会に、私たちは突入しつつある。
そんな中で私たちはどうすればいいのだろうか。
ズボフは「抵抗」を強く訴える。
しかし、その方法や理論はこれからの私たちに課せられているのだろう。