福祉避難所開設、計画通りに進まず 人手や周知不足、能登地震でも

福祉避難所開設、計画通りに進まず 人手や周知不足、能登地震でも(毎日新聞) – Yahoo!ニュース

能登半島地震の被災地には、障害者や介護が必要な高齢者ら、一般の避難所で生活するのが難しい人たちが少なくない。

国は自治体に対し、そうした被災者を受け入れる「福祉避難所」を開設するよう求めている。

しかし、計画通りには進んでいない現状がある。

一般の避難所で過ごすのが難しい高齢者や障害者、妊産婦ら向けに、災害時には「福祉避難所」が開設される。

1995年の阪神大震災で必要性がクローズアップされたが、具体的な取り組みはなかなか進まず、2007年に発生した能登半島地震で石川県輪島市に設置されたのが初めてのケースだった。

内閣府は21年に改定したガイドラインで、各自治体に対して事前に福祉避難所を指定して公表することを求めている。

設備の整った福祉施設が選ばれ、配慮が必要な人に加えて介助する家族も利用できる。

またこれとは別の枠組みで、自治体と福祉施設の事業者などがあらかじめ協定を結んで、災害時に要支援者を受け入れる福祉避難所もある。

22年12月時点で、全国に指定は8710施設、協定を結んでいるのは1万6646施設ある。

しかし、これまでの災害で、福祉避難所の開設や運用を巡っては課題が指摘されてきた。

16年に発生した熊本地震で、熊本市は地震前、176施設で1700人程度を受け入れる想定をしていた。

しかし、地震から1カ月後に開設できていたのは46施設で、利用は200人にとどまっていた。

地震によって、施設の建物が破損したり、職員が被災して人手不足だったりして、受け入れの態勢が整わなかったことが主な原因だ。

熊本市の担当者は「福祉避難所が住民に周知されておらず、一般の避難所に行くべき人が福祉避難所に避難して満杯になり、本当に必要としている人を受け入れられないこともあった」と説明する。

◇輪島市で7施設

珠洲は「みなし」で  今回の地震でも、同じ問題が起きている。

被害が大きかった石川県輪島市は今回の地震前、市内の障害者福祉施設など24施設と協定を結んでいた。

しかし、開設できたのは9日時点で3施設のみ。

残りは、地震によって施設の建物が損壊した上に、職員も被災して受け入れられる状態になかったという。

そのため市は地震後に、新たに受け入れ可能な2施設と協定を結んだ。

その結果、11日時点では7施設に増えて、介護が必要な高齢者を中心に118人が生活している。

担当者は「市内全域が地震でダメージを受けてしまった。(市外を含む)広域で受け入れる態勢が必要だ」と訴える。  

同じく甚大な被害が出ている同県珠洲(すず)市では、指定していた福祉避難所の7施設を、12日時点で開設できていない。

市は事前に想定していなかった施設を“みなし”の福祉避難所として、15人を受け入れている。

 被災地では、障害者らが福祉避難所にたどり着けていないケースがあるとみられる。

福祉分野の防災に詳しい鍵屋一・跡見学園女子大教授は「大人数が集まっている一般の避難所で、知的、精神障害のある人が過ごすのは難しい。避難所に行けずに、車中泊したり、損壊した家にとどまったりしている人がいると思う」と指摘。その上で、「福祉避難所は『余力があったら開設する』と、後回しになりがちだ。国全体で、福祉避難所の整備を進めるべきだ」と訴えた。

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