野坂昭如「火垂るの墓」あとがき

君たちの生まれる前、戦争があった。たくさんの人が死んだ。

そして、日本は、もう二度と戦争をしないと決めた。だが今、戦争を迎え入れつつある。

いつ戦争に巻き込まれてもおかしくない状態なのだ。君たちはこれをどう考える。

君たちの周りには食べ物が溢れている。けれど、そのほとんどが、輸入の産物。

戦争が起きれば、食べ物は入ってこなくなる。そうなれば、たちまち日本国中、餓死して当然。

ぼくが子供の頃、この国は農業が盛んだった。身近に、作る人の努力を感じることができた。

物を食べる時、作った人や、その収穫物に感謝する気持ちがあったし、大地の恩、水、天の恵みを有難く思っていた。

「いただきます」という言葉には、そういった気持ち、すべてが込められていた。

食べ物を大事にしてください。戦争中、そして戦後、餓えて死ぬ人を何人も見た。

戦争は嫌だ。戦争は決してしてはいけない。君たちに同じ思いをさせたくいない。

君たちが大人になる頃、戦争を経験したぼくたちはもういないだろう。

この本を読んで、戦争を考えて下さい。戦争について、語りあって下さい。語りあうことが大事です。

そして、ここに書かれなかった戦争の真実を、君たちの力で自分のものにしてください。

野坂昭如「火垂るの墓」あとがき

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