「やりたいことがなくても焦らない」2023年をいい年にしたい人に伝えたい「3つの心得」

労働者協同組合「結の会(ワーカーズ葬祭&後見サポートセンター)」は、エンドオブライフ・ケア協会の小澤竹俊先生から学んでいます。

その小澤先生の記事が出ていますので、以下、紹介します。

「やりたいことがなくても焦らない」2023年をいい年にしたい人に伝えたい「3つの心得」(東洋経済オンライン) – Yahoo!ニュース

新年を迎えると、1年の目標を立てる人も多いでしょう。

でも、もし本当にこの1年しか人生が残されていないとしたら? 

ホスピス医として、人生の最終段階の医療に携わる小澤竹俊さんの著書『もしあと1年で人生が終わるとしたら?』より一部抜粋、再編集のうえ、生き方を見つめ直し、後悔のない人生を送るための考え方をご紹介します。

よりよい1年を過ごすための3つの提案  

去年1年に後悔したことが多い方は今年こそはよい1年になるように、去年が満足いくものだったら今年はさらによい1年になるように願うでしょう。

これからの1年を、満足のいくよい年にするために私から3つの提案があります。

1.人生に「締め切り」を設けてみる

2.やりたいことがなくても焦らない

3.自分のための1年を過ごす  

まず、「人生に『締め切り』を設けてみる」ですが、これは「もし、あと1年で人生が終わるとしたら?」と考えるということです。

そのとき、あなたは、何をしたいですか? 

旅行に行きたいですか?  家族と楽しいときを過ごしたいですか?  もっと仕事をしたいですか?  

趣味に時間を使いたいですか?  おいしいものが食べたいですか?  ほしかったものを買うでしょうか? 

まだまだやりたいことがたくさんあるという方が、ほとんどでしょう。

なぜこのような問いかけをしたかというと、人生に締め切りを設けることで、何がやりたいか、何が今の自分にとって大切かが明確になるからです。

ホスピス医として人生の最終段階の医療に携わり、3800人を超える患者さんたちをお見送りしてきて、私には一つ、気が付いたことがあります。

それは、「死」を前にすると、人は必ず自分の人生を振り返るということです。

そして、自分の人生で誇れること、後悔していることなどを少しずつ整理し、最終的には多くの方が、「よい人生だった」と納得して、穏やかにこの世を去っていかれます。

日々忙しく過ごしていると、人はなかなか、自分の生き方を見つめ直したり、自分にとって本当に大切なものに気づいたりすることができません。

でも、もし、あと1年で人生が終わりを告げるとしたら……。

私が関わってきた患者さん同様、きっと多くの方が、自分の人生に思いをはせるのではないでしょうか。

人生には自分のペースがある

「人生がもしあと1年で終わるとしたら?」と自分に問いかけたとき、「限られた時間で何をしたいか」を考える方は多いでしょう。

 冒頭で挙げたように、さまざまな「やりたいこと」が心に浮かぶはずです。

しかし、一方で、「何もやりたいことがない」という方もいます。  

私がこれまで関わらせていただいた患者さんの中にも、「何もやりたいことはない」「早くお迎えがきてほしい」という方が、少なからずいらっしゃいました。

理由はそれぞれで、「やりたいことはだいたいやってきたから、思い残すことはない」という方もいれば、「もともと何事に対しても興味が薄く、物事に執着しない」という方、「やりたいことを我慢し続けてきて、『何かをやりたい』いう気持ち自体がなくなってしまった」という方もいらっしゃいました。

この社会では、人はしばしば「やりたいことは何か」を尋ねられます。

子どものころは、大人たちから将来の夢を聞かれ、就職する際には、会社で何をしたいかを聞かれ、定年を迎えると、第二の人生で何をしたいかを聞かれます。

そのため、私たちはいつの間にか、「やりたいことがあるのは当たり前のことだ」「夢や目標を持つべきだ」と思い込んでしまっています。

しかし、この価値観はときに人を苦しめます。

やりたいことがわからないとき、夢や目標が持てないとき、「自分はつまらない人間だ」「自分には価値がない」と思ってしまいがちだからです。

たとえ今、あなたにやりたいことが何もなかったとしても、焦ったり、自分を責めたりする必要はありません。

あなたにはあなたの生き方があり、人生のペースがあります。

夢や目標を持っている人と比べる必要はないのです。

ただ、「生きる指針がほしい」「そのためにも、やりたいことを見つけたい」と思うのであれば、「もしあと1年で人生が終わるとしたら?」と想像しつつ、過去を振り返ってみるのもいいかもしれません。  

子どものころ、純粋に楽しかったことはなかったか、「こういうことをして生きていきたい」と思ったことはなかったか思い出してみます。

もしかしたら、成長の過程で忘れたり、あきらめたり、我慢させられたりしたものの中に、本当にやりたいこと、大事にしたいことを発見できるかもしれません。

「人生があと1年で終わる」と考えれば、それまでの価値観が崩れ、自分を縛っていた固定観念やしがらみから解き放たれ、見える景色が変わってきます。

自分のためにやる必要があるか考える

「やりたい」と思っていたことでも、予定に入れ、時間が経つと、それがいつしか「しなければならないこと」になってしまいます。

そして「しなければならないこと」がたまっていくと、いつの間にか自分のためではなく、周りの人のために1年を過ごすことになります。

以前私が出会った、50代の女性の患者さんもそんな一人でした。

元気なとき、彼女は人材派遣の会社に勤め、いくつもの大きなプロジェクトを任されながら、一人で認知症のお母さんの介護をしていました。

ところが、自分自身にがんが見つかり、少しずつ身体の自由がきかなくなっていったのです。

「私は今まで、お母さんのために生きてきました。自分が病気になって一番悔しいのは、お母さんの介護ができなくなったことです」とこの患者さんは口癖のように言い、「お母さんの介護をしなければならないのに」「自分が情けない」と苦しみ続けていました。

ある日、私はこの患者さんに問いかけました。

「これからどんなことがあれば、お母さんは、穏やかな気持ちで日々を過ごすことができると思いますか?」

この問いに対し、彼女は何日も考え、「お母さんの介護をプロの手に任せること」という答えにたどりつきました。

長年抱えていた、「お母さんの介護を、自分がしなければならない」という思いを手放したのです。

「やりたいことがなくても焦らない」  

一方で、この患者さんが最後まで手放さなかった「しなければならないこと」もありました。それは、お母さんと一緒の写真を撮ることです。

「お母さんとの写真をどうしても撮りたい」と相談されたのは、症状がかなり進んで、あと何日生きられるかわからないというときでしたが、撮影は無事終了し、その5日後に患者さんは亡くなりました。  

とても大切な「しなければならないこと」を実現させられた喜びからでしょうか。

写真の中の彼女は、とても穏やかで美しい笑顔を浮かべています。

「しなければならないこと」に追われすぎて、自分の人生を楽しめていない人や、「~をしなければ」という気持ちが、自分でも辛いと感じている人は、1つひとつの「しなければならないこと」について、「あと1年で人生が終わるとしたら、自分のために、これをやる必要はあるだろうか?」と考えてみるのも、いいかもしれません。

「人生があと1年で終わる」と考えると、よけいなものがそぎ落とされ、今の自分にとって本当に大事なことだけが見えてきます。

ただ、元気に生きているとき、私たちはなかなか、その大切なものに気づくことができません。

人生の終わりが近づいてきたとき、初めて、それが何であるかを知ることも多いのです。

ですから、これからの1年を、少しでも悔いなく生きるために、自分らしく生きるために、「人生に『締め切り』を設けてみる」、「やりたいことがなくても焦らない」「自分のための1年を過ごす」ことをお勧めします。

そうすればきっと、これからの1年がすばらしいものになり、自分らしく生きられるはずです。

小澤 竹俊 :医師

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