〈引き取り手のない遺体〉が急増中!?「誰にも迷惑をかけずに逝く」は不可能。おひとりさまこそ、準備しておくべき「死後の手続き」(婦人公論.jp) – Yahoo!ニュース
遺された身体や荷物、財産の処分を自身で行うことはできません。
家族に頼れない高齢者が安心して死を迎えるためには、どのような備えが必要なのでしょうか(構成=上田恵子 イラスト=おおの麻里)
◆「誰か」に決定をゆだねなければならない
よく、「私は誰にも迷惑をかけずに逝くから大丈夫」と言う方がいます。
けれど、「誰も巻き込まずに死ぬのは不可能」です。
私は長年、身元保証や任意後見など、高齢者が亡くなる前後のサポートをしてきました。
その経験上断言できます。
人生の終盤をマップにしてみました(下図)。
自立期(1)は、自分自身で意思決定ができる時期です。そこから、加齢により筋力や精神力が衰えていくフレイルの時期(2)を経て、人によっては、認知症や病気で判断力を喪失してしまうことも(3)。
この時期に入ると自分自身で意思決定ができなくなるため、家族なり、第三者なり、「誰か」に決定をゆだねなければなりません。 さらに問題なのは、亡くなった後(4)のこと。
たとえ死の直前まで意識がはっきりしていたとしても、死後のことは自分自身で実行できません。
遺された「身体」や「荷物・手続き」、「財産」の処理を信頼できる人に託さなければならないのです。
私は、(2)~(4)の時期を総称して「エンディング期」と呼んでいます。
この時期の高齢者が安心して人生の終わりを迎えられるように、高齢者と病院や高齢者施設、葬儀社といった機関をつなぐ役割。
日本では原則として家族がそれを担っています。
身元保証人となり、いざという時に駆けつけてくれることが前提となっているのです。
しかし今後ますます家族形態は多様化し、子どもがいない夫婦や、配偶者と離婚や死別をした人、生涯独身の人なども増えるでしょう。
仮に子どもがいても、経済的に頼れない、折り合いが悪いなどの理由で、老後を託せないケースもあります。
託せる家族がいないという問題は、誰もが直面しうるものになってきているのです。
◆「引き取り手のない遺体」になってしまったら
実際に私が見たおひとりさまの事例をご紹介しましょう。
【CASE1】 「私は葬儀社に生前予約をしているので安心よ」と言っていたAさん。生涯独り身を通し、きょうだいもいません。 突然脳梗塞で緊急搬送され、そのまま亡くなりました。果たして「誰」が入院費用を払い、Aさんの死を葬儀社に伝えるのでしょうか?
【CASE2】 夫婦で老人ホームに入居し、夫に先立たれたBさん。夫の姪に身元保証人をお願いしていましたが、夫の死後断られてしまいました。 次の保証人が決まる前に体調を崩し、そのまま死去。2週間以内に部屋を片付け、退去する必要があります。「誰」がBさんのモノの処分をするのでしょうか?
【CASE3】 賃貸マンションでひとり暮らしをしているCさん。夫と離婚した後、ひとり息子とは絶縁しています。ある日、孤独死しているのが友人によって発見されましたが、死後のことは準備していなかった様子。 Cさんの身体と荷物は「誰」が対処するのでしょうか?
3つの事例の「誰」は、担当のケアマネジャーや老人ホームのスタッフでしょうか?
いえ、それはできません。原則として介護関係者は、「命に関すること」「お金に関すること」に立ち入るのは不可。
それらはあくまでも家族の役割として、線引きされているのです。
病院の場合は入院契約が、老人ホームの場合は入居契約が、自宅の場合は介護の利用契約が、本人の死亡とともに終了してしまいます。
では、死後を託す相手を決めずに世を去ってしまうとどうなるのでしょうか。
まず問題になるのは「身体」です。
病院で身元保証人がいないまま亡くなったり、自宅で孤独死したりした場合は「引き取り手のない遺体」となり、自治体が委託した葬儀社が搬送・安置することになります。
そして役所が法定相続人を探して、遺体の引き取り(葬儀の主宰や費用の負担を含む)を依頼。
そこで引き受けてくれる相続人が見つかれば、家財処分(賃貸住宅であれば原状回復や解約手続きも)や遺産相続へと進むことができるでしょう。
しかし、法定相続人がいない場合は、家庭裁判所の相続財産清算人選任手続きに進みます。
この場合、債務が清算されて財産が国庫に帰属するまで数年かかることも。
なお遺体は、火葬・埋葬を市区町村が行うことが法律で定められています。
多くの自治体ではご遺骨を数年間保管してから、永代供養墓に合祀するのだそうです。
実は今、自治体はこれらの業務に振り回されています。
現状なんとか回っているのは、医療や介護、葬儀の現場の人たちが見るに見かねて、職域を超えるリスクを冒しながら担っているからです。
このような仕事は「シャドーワーク(陰の仕事)」と現場では呼ばれています。
しかし、超高齢社会の日本では、このままでは立ちゆかなくなるのは火を見るよりも明らか。
見て見ぬふりをしてきた政府も、ようやく課題の解決に向けて動き出しています。