無縁墓 氷山の一角…今後さらに増加も、撤去に壁(テレビ朝日系(ANN)) – Yahoo!ニュース
今年は9月20日から9月26日が秋のお彼岸ですが、全国の公営墓地の約6割に、引き継ぐ人がいなくなり放置された『無縁墓』があることが、総務省の調査でわかりました。
専門家は、今回の調査でわかったのは氷山の一角で、今後さらに増加すると指摘しています。
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総務省が公営墓地の状況について全国調査をしました。
その結果、公営墓地を運営する765の市町村のうち58.2%で、墓を管理する縁故者がいない『無縁墓』があることがわかりました。
また、管理費の滞納は238市町村で起きていて、総額で約4億4800万円にも上るということです。
『無縁墓』による弊害です。 墓の周りに不法投棄がされていたり、災害で被害を受けても放置されているところもあります。
香川県の高松市では、市営霊園にある墓のうち、21.3%が『無縁墓』
香川県の高松市では、市営霊園にある墓のうち、21.3%、約8300区画が『無縁墓』でした。中には、全体の43.6%が『無縁墓』となっている霊園もありました。
高松市の担当者は、『無縁墓』について、 「少子高齢化や都市部への引っ越しなどで、墓を管理する人が少なくなってきている。墓石が倒れたり、雑草の処理がされていないところもあるので、災害時の危険や墓地の環境悪化につながりかねない」としています。
『無縁墓』は、都内にもあります。 東京・豊島区にある『雑司ケ谷霊園』です。墓の周りに草木が生い茂り、縁故者に呼びかける看板が設置されている『無縁墓』があります。園内に『無縁墓』は、27区画あるということです。
シニア生活文化研究所の小谷所長「今回の調査で判明した『無縁墓』は氷山の一角。」
国内には、約88万4000もの墓や納骨堂があります。 シニア生活文化研究所の小谷所長によると、 「今回の調査で判明した『無縁墓』は氷山の一角。今後、人口減少で墓を支える人が減り、『無縁墓』はさらに増える」ということです。
総務省の調査では、対策が進まない理由についても指摘しています。 『無縁墓』を解消するには、 ●墓の縁故者などがいないか調査し、 ●確認できなかった場合に、縁故者などに対し、1年以内に名乗り出るよう官報に掲載します。 申告がなければ市町村長の許可で、合葬墓等に遺骨を移すことができます。
ただ実際には、『無縁墓』の解消のために、遺骨の移動や墓石の撤去に着手した市町村は、2016~2020年までの5年間で、わずか6.1%でした。
対策が進まない理由です。 札幌市は、 「『無縁墓』の撤去費用の負担が大きい上に、墓石の保管場所が確保できない」としています。
広島県呉市「遺骨を移すこと自体、極めて慎重に判断せざるを得ない」
広島県呉市は、 「撤去後の墓石の取り扱いは法律の規定がないことや、撤去した場合に所有権を主張する縁故者から、損害賠償請求を受ける可能性があるため、遺骨を移すこと自体、極めて慎重に判断せざるを得ない」としています。
『少子高齢化』『多死社会』の中で…墓との向き合い方は?
墓を引き継いでいくことについて、みなさんの悩みです。 70代男性 「墓を引き継げと言われても、子どもが迷惑に感じると思う。自分は墓を作らない」
50代男性 「墓を引き継ぐ人がいない。なくしてしまうのは、先祖に申し訳ない気持ちと、自分が亡くなった後の墓の世話がどうなるかの狭間で悩んでいる」
40代女性 「山梨にある代々からの墓には、なかなか行けていない。遠くにある中で、墓を引き継ぐのは自分には無理」 50代男性 「次男なので、自分や妻が入る墓がない。墓を建てるには、多額の金がかかるのでそれはできない」
シニア生活文化研究所の小谷所長「先祖代々の墓に対する考え方を変える必要がある」
こうした声に、シニア生活文化研究所の小谷所長は、 「ライフスタイルが変わったのに、墓のあり方は変わらないまま。先祖代々の墓に対する考え方を変える必要がある」としています。
墓じまい…かかる費用は?寺と金銭トラブルも
墓を引き継ぐ難しさから、墓じまいを考える人もいます。 60代女性 「私の代で墓じまいをする。お参りしてくれるだけでいいので、子どもがいる東京で、合同の墓を自分で用意しようと思っている」
別の60代女性 「3年前に思い切って墓じまいして、都内の納骨堂に移した。遠くて不便なお墓はもういらない」
墓じまいにかかった費用です。 ある調査によると、 一番多かったのは『10万円~30万円未満』、 次に多かったのは『10万円未満』と『50万円~100万円未満』でした。
墓じまいで、どのような費用がかかるのでしょうか。 今あるお墓に対して、 ●墓石の撤去工事の費用が、1㎡あたり8~15万円 ●閉眼供養のお布施は、3~10万円 ●墓がお寺にある場合は離檀料がかかり、10~20万円です。
そして、新しい納骨先で、新たに墓を買う場合は、 ●永代供養墓、樹木葬、納骨堂等の費用が5~100万円です。納骨先によって変わってきます。 ●開眼供養のお布施は、3~10万円です。 墓を購入せず、 ●手元供養や散骨を選ぶ場合の費用は、数千円~50万円です。
墓じまいをめぐっては、元々の寺と金銭トラブルも起きています。 80代女性 「自宅から遠く、自分も入るつもりはないので、墓じまいを寺に申し出たところ、300万円ほどの高額な離檀料を要求され困惑している。払えないと言うと、ローンを組めると言われた」
70代女性 「跡継ぎがいないため、お寺に離檀したいと相談すると、過去帳に8人の名前が載っているので、700万円かかると言われた。不当に高いと思う」
シニア生活文化研究所の小谷所長「離檀料の支払い義務はない。」
こうした高額な離檀料は、支払うべきでしょうか? シニア生活文化研究所の小谷所長によると、 「離檀料の支払い義務はない。しかし、墓じまいについて、あらかじめ相談しお礼をすることは、マナーではないかと思う」ということです。
墓じまい ためらう人も…事前にやっておくべきことは?
お金以外の理由で墓じまいをためらう人もいます。 50代女性です。 子どもがいないので、自分の代で墓じまいする予定です。可能性があるので、詐欺の手口を知ることも大事だということです。
15年前に父親が亡くなった時に、母親が約300万円でお墓を購入しました。現在は、母親が認知症のため自分が墓を管理しています。
「認知症で意思も確認出来ないため、母が存命のうちは墓じまいできない」
50代女性は、 「母が『自分もここに入る』と思い、購入したお墓なので一度はお墓に入れてあげたい。認知症で意思も確認出来ないため、母が存命のうちは墓じまいできない」と話しています。
墓じまいに向けてやっておくべきことについて、シニア生活文化研究所の小谷所長によると、 「いずれ必ず直面する問題なので、事前に墓や遺骨をどうするか、親族と話し合っておく必要がある」ということです。
自治体も墓じまいを補助しています。 東京都の特例制度です。
一つ目は、23区内の都営霊園(青山、谷中、染井、雑司ケ谷)の墓を返還する場合、墓を更地にする撤去費を免除します。
この制度を使って昨年度までに1548件が返還されました。
谷中霊園と青山霊園の撤去費免除は終了しています。
東京都の特例制度、二つ目は、8つの都営霊園の墓から、合葬墓に移した場合の使用料を免除する制度です。昨年度、この制度を使って、過去最多となる802件が返還されました。
鹿児島市は、遺骨の受け入れ施設を建設しています。 墓じまい件数が増加する中で合葬墓を建設、来年2月から受け入れ開始の予定です。対象者は、市営墓地の所有者で、墓じまいする人や鹿児島市民で墓を持たない人などの予定です。
増える『無縁墓』自治体の対応は
引き取り手がいない『無縁遺骨』も増えています。 全国の市区町村で管理、保管されている、引き取り手がいない『無縁遺骨』は2021年10月時点で、5万9848柱あり、それまでの3年で約1万4000柱増えています。そのうち、身元がわからない遺骨は、約6000柱で、残りの9割の約5万4000柱は、身元が判明しているのに引き取り手がありません。
自治体の取り組みです。 神奈川の横須賀市は、『エンディングプラン・サポート事業』というものを行っています。対象は、原則、1人暮らしで身寄りがなく、所得が少ない高齢者などですが、遺骨の引き取り手がいないと想定される人も対象です。市と連携している葬儀社と生前契約を結ぶもので、費用は26万円です。
この事業では、登録者が亡くなると、市の職員が葬儀に1~2人参列して、遺骨を収骨し、登録者が指定した寺へ納骨します。 さらに、生前には市の職員が4~5カ月に1度、自宅を訪問します。そして、毎月、安否確認の電話をするということです。
『無縁遺骨』が増加した理由について、横須賀市の福祉専門官の北見さんによると、 「1990年代に核家族化や少子化が進み、その後、携帯電話が普及したことがダメ押しになった。昔は番号案内104で『〇〇さん』をかたっぱしから電話し親族を探したが、今は固定電話が減り、104登録も減ったので連絡がつかない」といいます。
北見さんによると、横須賀市で過去、このような実例もあったということです。 子どもがいない夫婦の夫が亡くなり、妻が夫を納骨しました。その後、妻も亡くなりましたが、親族は夫の墓の場所を聞いておらず、わからなかったので、妻だけが市の無縁納骨堂に入ったということです。
横須賀市の対策です。 『わたしの終活登録』というサービスを行っています。対象は全市民で、年齢制限なし、費用は無料です。葬儀などの生前契約先、遺言書の保管場所、墓の所在地など11項目を事前に登録することができます。 そして、万一の際、警察や病院などからの問い合わせに、市が代わりに回答するということです。