“アクティブ・バイスタンダー” 加害者・被害者以外の遭遇した第三者にできること。 – ピルにゃん (pillnyan.jp)
大学内で起きる性暴力を根絶するための活動を行う『Safe Campus』が主催して全国の大学生20団体が集結し「アクティブバイスタンダー」というプロジェクトを立ち上げました。いじめ・性暴力・ハラスメントなどに遭遇したときに、被害者に寄り添える第三者になるにはどうしたらいいか?、Safe Campusの佐久川姫奈さんに教えてもらいました。
アクテイブ・バイスタンダーとは何ですか?
“bystander” は英語で、「傍観者・見物人・居合わせた人」「第三者」訳されます。“active bystander”は、いじめ・暴力(支配的なもの・性的なもの)など誰かが危険な状況に置かれている時、違法行為など正しくないと感じる言動にさらされている時、積極的にアクションを起こす人を示す概念です。
具体的にどんなことをしたらいいの?
直接的に加害者に注意するのも難しいなぁ。自分も加害されそうで怖いという場合はどうしたらいいですか?特に学内で先輩だったりすると指摘するには勇気が要ります・・・。
直接介入だけではありません。覚えておこう!5つの介入方法!
“5D”といわれる5つの介入方法があります。
アメリカの大学などでは、「第三者の介入トレーニング」といって、新入生になると、このような状況に遭遇した場合の対処方法を全生徒に教えている学校もあります。社会心理学の研究で介入効果があるとされている方法(※1)です。
※介入以前に自分の身の安全が確保できているかどうかの確認は必ず行いましょう。
1. 注意をそらす(Distract)
ハラスメントとは関係ない話を始めることで、事件が起きるのを防いだり、加害者の邪魔をしたりすることができます。
対応例
■意図的に飲み物をこぼしたり、財布の小銭を落としたりして、加害者や周りの人の気をそらす
■嫌がらせを受けている知人の振りをして「LINE見てくれました?」「ひさしぶり!」など、話しかけてみる
■道や時間などを聞いて話しかける
2. 第三者に助けを求める(Delegate)
Delegate「=委任」とは、第三者に援助を求めることです。
対応例
■店の責任者、バスの運転手、駅員、先生を見つけて介入してもらう
■友人がもしいたら、さらに協力してもらい、委任できる人を見つけている間に、被害を受けている人に道や時間を聞いてもらう
3.証拠を残す(Document)
映像や音声などで証拠を残すことが、被害者にとって助けになることがあります。撮影のコツは「自分自身の安全な距離を保つこと」「場所を特定する周囲の目印を撮影する」「日時を言う」などです。
撮影には注意点がありますので、以下の注意点を必ず守ってください。
①状況を把握する
→被害者を直接的に助けている人がいない場合は、できたら撮影役よりも他の介入方法も優先的に検討してみてください。
②撮影後は映像の利用方法は被害者に必ず許可を得る
→無断で他の人に見せたりネットに公開してはいけません。求めがあればデータ削除などもしてください。
③被害者から目をそらさない
→相手をサポートすることに集中してください。
4. 後で対応する(Delay)
その場で行動を起こせなくても、事後に被害者の様子を尋ねるだけでも助けになります。多くのハラスメントやいじめは、短時間に起こるため、その状況が終わるまで待ってから、嫌がらせを受けた方に声をかけるのも良い選択肢でしょう。
対応例
■「大丈夫?」と声をかける
■あなたが被害者をサポートできる方法があるかを尋ねる
■被害者の目的地まで同行したり、しばらく一緒にいることを申し出る
■必要な場合、学校や職場などの管理者や警察へ事件の報告を補助する
■事件の証拠がある場合、被害者がその資料を必要としているか尋ねる
5. 直接介入する(Direct)
今起きていることが、加害行為であることを直接指摘する方法もあります。ただ、指摘することによって加害者の敵意があなたに向くことで状況が悪化する可能性もあります。
直接介入するか、見極める方法
①あなたと嫌がらせを受けている方、双方の安全が確保されていること
②状況が悪化する可能性が低いこと
③嫌がらせを受けている方が助けを求めていること
対応例
■「それは不適切じゃないかな」
■「〜〜さんに失礼だと思うよ」
■「それ、ハラスメントだよ」
※言葉を短く簡潔に伝えてください。また、加害者と対話、討論、議論しようとしないでください。加害者を更生させたりすることに意識を向けるのではなく、嫌がらせを受けている人を助けるために最前を尽くしてください。
第三者にできることを学ぶ、おすすめ動画
新しい取組み:アクティブバイスタンダーのバッジを制作!
今回、学生団体のみなさんで協業して、アクティブバイスタンダーであることを表すバッジを作成するプロジェクトを立ち上げたんですね。目的について教えてください。
学内アンケートから見えてきた”第三者”の重要性。
性暴力のないキャンパスを目指す中で、学内性暴力の実態を可視化するために実態調査を行いました。そうすると、「性暴力被被害を受けた人のうち7割が第三者に相談していない」という現状が見えてきました。第三者というと、性暴力の相談窓口や、周囲の友達、身近な信頼できる大人などがあげられると思います。相談できない理由は、被害を相談するに値すると思っていなかった、という自身の被害の軽視や、相談しても無駄だと思ったという諦めの回答が見られます。このような相談しにくい環境には、社会的に性暴力を軽視する傾向やセカンドレイプが影響しているのではないかと考えます。
このような背景を踏まえて、まずは現状やセカンドレイプについての認識を広め、アクティブバイスタンダーを増やすことが被害者が相談しやすい環境をつくる助けになるのではないかと考えました。さらに、アクティブバイスタンダーのシンボルになるようなものがあれば、より相談へのハードルが下がるのではないでしょうか。
そこで、「私はいつでも被害者の味方である。」ということを表明するバッジをつけることで、相談できる相手・助けを求める相手を周囲に見つけやすくするという解決策を考えました。このバッジの配布は、最初は、アクティブバイスタンダーとして、適切な行動が取れるような、共催の学生団体、ジェンダーや性教育の専門知識を持つ先生や、カウンセラーの方々を対象としています。
アクティブバイスタンダーバッジを付けた人が学内にいることで狙う効果は二つです。
一つ目は、早期に適切な相談者を見つけることで、正しいケアにつながり、長期的な心的影響を軽減することにつながればと思っています。二つ目は、性暴力発生の予防効果です。いじめやハラスメントは、ほとんどの場合、周囲に人がいる場合に起きます(※2)。第三者が性暴力被害発生のストッパーとして果たす働きは非常に大きいと考えています。バッジをつけることで、「性暴力を容認しない」風土を可視化させることができますし、さらに5Dの行動ができる人が増えれば、性暴力を抑止できる可能性もあると考えています。
バッジプロジェクトの協賛団体一覧
追手門学院大学セクマイサークル「RoseWing~〇〇の在り方を肯定する会~」、共立女子大学 Knower、慶應義塾大学 Voice Up Japan Keio、国際基督教大学 Voice Up Japan ICU、国際基督教大学 ICU PRISM、DIVEUS、#男女共同参画ってなんですか、中央大学 mimosa、東京大学 TOPIA、東京大学 Tottoko gender movement、東北大学 AROW、東洋大学 DAISY、長崎大学 Partner’s Shoes、名古屋大学大学院生 島袋海理、+Fem-me.、福島大学 にじいろサークル、北海道大学 虹の集い、立教大学 10×10、立命館アジア太平洋大学 Equal APU、立命館大学 TAG、早稲田大学 シャベル
今回は、アクティブバイスタンダーについて教えていただき、ありがとうございました!
参考文献
※1 Ann L.Coker, Patricia G. Cook-Craig, Corrine M. Williams,et al.Evaluation of Green Dot: An active bystander intervention to reduce sexual violence on college campuses. Violence against women,2011; 17(6), 777-796.
※2 Lodge & Frydenberg, 2005; Timmerman, 2003
※アクティブバイスタンダーバッジの問い合わせしたい方はこちらにご連絡ください。