歴史の出発点・岩波新書「日本文化史」家永三郎1959年

「歴史の出発点」

昔は、国のはじまりを歴史のはじまりとする考え方が支配的であった。

国家の大きな権威の前に国民をひれ伏させてきた時世では、国家のなかった時代は、まだ人間とはいえない動物の時代であるかのように見なされていたようである。

国家のない時代があったという事実を教えるのは、国家が人類の生活に必ずしもなくてはならないものでないことを教える結果となり、ひいては、将来ふたたび国家のない時代のくることを希望する「危険な」思想をみちびきだすおそれがあったからであろう、、、

また、それと平行して文献のない時代を先史時代とよんで、まるで歴史以前の時代であるかのようにとりあつかう習慣も行われた。

具体的には、たいていの場合、上にのべた、国家のなかった時代を歴史以前とする考え方と同じ結論になり、原始社会は先史社会にはいってしまうのである、、、

国家は人類の歴史のある段階ではじめて発生する社会形態の一つにすぎない、したがって、将来いつか消滅するであろうところの歴史的産物と考えられるようになっており、、、

岩波新書「日本文化史」 家永三郎 初版1959年 本文冒頭

タイトルとURLをコピーしました